ペンタに1音足してアドリブソロフレーズの幅を広げる話

先日ペンタトニックスケールの種類と使い方の話の中でスケールアウトポジションに触れフラグ立ててしまいましたので、責任取ってさっそくご紹介し早めに回収しておこうと思い笑。

音階から5音を厳選抽出したペンタトニックスケールは、アドリブでギターソロを弾く場合などでもそれほど熟考せずともある程度音楽的な旋律になりやすい反面、音数が少ない故にベタでワンパターンなフレーズになりがちな側面もあるのがデメリットであり弱点です。そこで、様々な工夫を施してバリエーションを増やしたりニュアンスに変化をつけていくわけですが、その方法論の一つとして「ペンタトニックに音を足して使う」手法があります。

ジャズなどで多用されるがっつりスケールごとずらしてしまうアウトフレーズやバッキングコードトーンを随時把握し狙うアプローチよりもずっと低い難易度と言えますので、今回は、あまり深く考えずにそのままのキーのペンタトニックスケールに簡単に付加してニュアンス付けできる愛のちょい足しトニック技を幾つかご提案します照。


Penta Tonic +α



ブルーノートを取り入れブルージーな魂を込めて弾く

ギタリストにとってはかなり広く知られもはや一般常識?な話かもしれませんが、ブルーノートとは長音階における♭3・♭5・♭7度の音で、ジャズやブルース・ロック等でも絶対に欠かせないいわゆるブルーススケールです。取り入れるとアンニュイで切なげな雰囲気が一気に醸し出されるのでギターソロとの相性も抜群です。が、あくまで補佐的な装飾音ですので、長く発音させるというよりはクロマチックやスライドでの通過やチョーキングなどでワンポイント追加する使い方が中心となります。演歌でいうこぶしの歌いまわしようなニュアンスをイメージすると良いでしょう。


メジャーペンタには「短3度

|P1|・|M2|m3|M3|・|・|P5|・|M6|・|・|

メジャーペンタトニックには短3度(m3rd)音が一番自然に挿入しやすいでしょう。


マイナーペンタには「フラット5度

|P1|・|・|m3|・|4|-5|P5|・|・|m7|・|

マイナーペンタトニックでは♭5度(-5th)音となり最も有名なブルーノートと言えます。



アウトスケールポジションで小賢しくもお洒落に弾く

こちらもスケール外の音ですが、比較的取り入れやすく各ペンタの雰囲気を大きく壊さず使える音をチョイスします。ただし、こちらは何れもフレーズ上昇時かつ極短い使用に限られがちです。下降フレーズでは使い所を選び中々フィットしにくいですし、ハンマリング&プリングなどで鳴らす時間も極短くさりげない位が丁度良いでしょう。また独特な響きを醸すためあまり頻繁に使うと野暮ったくなりがちですので使い方には少々注意が必要です。ファッションと同じで、ヤリスギはダサいみたいな汗。ただし、ドミナントモーション時のオルタードスケールとしてならこれでもかくらい鳴らして良いでしょう笑。


メジャーペンタには「短6度

|P1|・|M2|・|M3|・|・|P5|m6|M6|・|・|

メジャーペンタトニックで音数を稼ぎたい場面等で主に「長6度」へのアプローチに「短6度」を使うと良いでしょう。


マイナーペンタには「長7度

|P1|・|・|m3|・|4|・|P5|・|・|m7|M7|

マイナーペンタトニックでは「長7度」となりトニック解決へのタメを増やしドミナントモーション感の強化に有効です。



ヘキサトニックスケールで歌う様にメロディアスに弾く

あまり聞き馴染みない方もおられるかも知れませんが、割と昔からあるアプローチです。各スケールから1音復活させ、よもやヘキサ(6)トニックスケールにしてしまえという本末転倒?の発想の転換です笑。が、そもそも当該スケール内に含まれている音ですし、1音増えるだけで自由度は格段に増しいわゆるペンタ臭さも大幅に解消されるので意外と効果覿面です。バッキングコードによっては避けた方が良い場面もありますが、先述のアウトスケールポジションよりは使い所に気を使いませんし、5音プラスときどき1音と考えれば通常のペンタフレーズプレイのイメージを大きく変える必要もありませんから気持ち的にも楽ですよね笑。


メジャーペンタには「長7度

|P1|・|M2|・|M3|・|・|P5|・|M6|・|M7|

メジャーコード4和音におけるセブンス音ですので4度より使いやすい+α音と言えるでしょう。


マイナーペンタには「長2度

|P1|・|M2|m3|・|4|・|P5|・|・|m7|・|

いわゆるナインスのテンションノートとなりますのでこちらも扱い易いプラスワンと言えます。



ペンタトニックスケール+α音のギター指板図

ギタリストがイメージし易いよう、これらのプラスα音全てをギター指板図に落とし込んでみました。四角枠付きの音がトライアドで、濃い文字が通常のペンタトニック。ちょっと薄く小さい文字が各+α音です。いずれもCルートで、CAGEDシステムでいうE型ポジションまわりを例に。



Cメジャーペンタトニックスケール図

Cメジャーペンタトニック+α


Cマイナーペンタトニックスケール図

Cマイナーペンタトニックスケール+α


画像の通り、ペンタのみに比べ弾けるポジションがかなりたくさん増えましたね。ただし、これら全部を一度に使い始めるとスケール感というか調性というか独特のまとまりが一気に曖昧にぼけぼけしてしまいますので、あくまで通常のペンタトニックスケールを主軸にときどきちょい足しするバリエーションのプラスアルファ音として理解し把握することがギターライクなペンタフレーズを彩るコツと言えるでしょう。


NAC#'s Suggestions for playing the GUITAR.

今回ご紹介した手法はいずれもペンタのフレーズで知らずとも既に使っていたり、各スケールとペンタを織り交ぜて自然と使っていたりするものですので、音楽的に高度なアプローチというわけではないかもしれませんが、ペンタの拡張版として把握しやすく、チョーキング・スライド・ハンマリングオン・プリングオフなどギター特有の奏法と相性も良いので、ギターでのアドリブソロフレーズの表情を豊かに弾くニュアンス付けに大変有効な手法と言えます。

また、ギターは特にソロやリフ・フレーズにおいては音楽理論的な縛りが比較的薄い楽器といえ、ボーカルの歌い方等のように独自のニュアンスもとても大切です。例えば、理論的には外れていてもギターっぽくて格好良いフレーズで不思議と違和感がない有名楽曲なども幾らでもあります。セブンスコード上で弾くマイナーペンタに加える短3度から長3度へ寄るニュアンス等もその一例。それぞれの音をどういう場面や背景でどの程度使うと効果的か、自分で感じ考え試しながら経験することが理論に裏打ちされたテクニックを身に着けかつ個性的に使いこなす重要なステップですので、これらの音をヒントに練習を重ねぜひバリアス色々なシーンでレッツトライしてエンジョイプレイしてくださいね。ルー・ナック♯。

ギタープレイヤー視点での音楽理論的解説中心のギタリスト音楽論な記事をこちらに纏めていますのでもしお時間許せば復習がてらご一読どうぞ。