オルタードスケールの構成音と使い方

オルタードスケールとは、テンションに♯や♭のついた構成音階、メロディックマイナーのダイアトニックスケールで言う処の第七モード(※以下で詳しく解説)となりますが、パッとこの音階だけ聞いても難解でなんのこっちゃて感じる方が多いかもしれません。

今回はそんな不思議な音階オルタードテンションスケールの使い方などをコツやポイントをできるだけ簡潔にまとめてみます。ギタリスト向けにギター指板図などを用いて解説していますが、ベースはもちろんその他の楽器も基礎的に共通の音楽理論です。少々高難易度ですがマンネリからのステップアップや理解を深めるヒントとなれば幸いです。



スケール構成音

まずオルタードスケールの構成音を確認してみましょう。


T1・♭9・♯9・M3・♯11・♭13・m7


となっています。ほらもう見た目が難かしいです苦笑。つまりは「Major3rd=♭11th」で「minor7th=♯13th」と捉え、テンションノートの前後の音全てを使って構成されている大変不安定で掴みどころのない音階と言えます。インターバルで言うと「全全全全」。半音と全音が2度繰り返すので少々特殊な運指と感じるかもしれません。



メロディックマイナーの第七モードAltered

次に少々視点を変え、もう少し馴染みのあるメロディックマイナースケールをおさらいすると、


T1・M2・m3・P4・P5・M6・M7


です。インターバルは「全全全全全」。これは極一般的なメジャースケール(イオニアンモード)のメジャー3rdを半音下げただけの音階ですので覚えるのも比較的容易かもしれません。

で、

実は、メロディックマイナースケールの第七音である主音半音下のメジャー7thをトニックと想定するとオルタードスケールになっているのです。



メロディックマイナーのダイアトニックコード

教会旋法同様、7音それぞれに各モードがあり、当然ダイアトニックコードも構成されます。

  • 第一 Melodic minor (m△7)
  • 第二 Dorian♭2 (m7)
  • 第三 Lydian♯5 (aug△7)
  • 第四 Lydian7th (7)
  • 第五 Mixolydian♭6 (7)
  • 第六 Locrian♯2 (m7♭5)
  • 第七 Altered (m7♭5)

中でも比較的使用頻度が高いと言えるのは上記赤文字表記の3つでしょうか。



Cメロディックマイナーギター指板図

メロディックマイナー各モード

例えば図のようにメロディックマイナーでのスケール構成音をギターの指板で見てみると、

,Melodic minor =,Altered(その他)

となり主音の解釈が違うだけで使う音自体は全く同じなわけです。もちろん移調しても相対的な位置関係は変りません。ちなみにこの図の場合で言うリディアン7th やその他各モードも同様です。



オルタードフレーズの使い方

オルタードスケールのフレーズはどのような場面で使えるかですが、

ドミナントモーションする7thコード上で使う

のが最も一般的なセオリーと結論付けられます。例えばディグリーネーム1625進行中で言うV7です。もちろん絶対そうしなければならないわけではありませんし、自由な発想や独自の感性で新たな使い方を試みる事も大切ですが、逆説的に言えば、独自の解釈を発展させるならその前提として一般的な常套手段は把握しておくべきでしょう。



ドミナントモーションとは

完全4度下ドミナント7thコードからの解決(着地)感を生む動き(流れ)の事をドミナントモーションと呼びますが、この時のセブンスコードでは帰結感の前の不安定さを演出していますので、その上で弾くフレーズもキーのスケールに関わらず不安定な雰囲気を醸すオルタードスケールが似合うわけです。

不安を更に煽っていくメンヘラスタイルからのツンデレですね。

ただし、ダイアトニック的な解釈でキースケールのまま素直に通り過ぎても当然ハマるので、スケールアウトフレーズとして大きく変化をつけたい時、あるいは意図的にハズシ聴衆を惹き付けたい時などに効果的なチャレンジングな上級アプローチと言えるかもしれません。



オルタードを慣れたペンタで弾く

オルタードスケールを覚えたとしていざ曲中の1コード内で使うとすると、実際には1小節でも数秒間程度の話ですので、コード進行中に構成音をぜんぶ弾く事はなかなかありません笑。また、それまで普通にギターライクでブルージーなロックフレーズを弾いてたとすればドミナントセブンス上だけ急に音階をジャジーに弾き始めても取って付けた違和感しか生みません。それは例えるなら、

純日本人夫婦の間に突如青い目の金髪赤ちゃんが生まれてしまうほどの違和感です汗。

そこで浮上する一つ目の案が弾き慣れたペンタの型でナチュラルに繋げて弾く手法。メロディックマイナーのダイアトニックコードではのみマイナーセブンスとなりますので、つまりオルタードスケールの代わりとしてもマイナーペンタトニックが使えるのです。先の指板図でもご確認いただけると思いますが、

短3度(一音半・3フレット)上のマイナーペンタ

と考えれば良いでしょう。通常1音チョーキングしやすい場所でもインしているので、普段の手癖で弾いてもまあ収まるでしょう。注意点としては、癖でマイナースケールポジション等に拡張するとそもそものオルタードスケールとしてはアウトしますので、あくまでマイナーペンタ5音階のみで使う事。



抜粋したk5音で簡単に弾く

1フレーズ内で時間的に弾く音数が限られてくるという事は、物理的に使う音を予め絞っておいても自由度は減るものの不都合も少ないと考えられます。そんな自分に甘く怠惰なコンセプト発想(笑)の基、オルタードフレーズのニュアンスを極簡単に取り入れるための抜粋オルタードポジションをダイアグラム指板図でご紹介します。


抜粋オルタード5ポジション図

この通り、5弦6弦それぞれに主音を想定してもいずれも全く同じポジション(形)で弾くことが出来るので覚えやすく把握しやすいはず。しかも使うのは人・中・薬指の3本だけで済みますので面倒くさがりなあなたに最適な奏法です笑。ベーシストの方にも有効ですね。

オマケに、

5弦トニック型の3弦♭13同列フレットの2弦がオクターブ上のトニックで、6弦トニック型の4弦♭13同列フレットの3弦が♭9th(いずれも画像中の薄い文字部分)となり、各々音の価値は違いますがポジションの型としてはどちらのルートでも同じ運指で使える音なので覚えておいて損はありませんね。ぼくはこれを「オルタードポジション」といま勝手に命名します笑。



厳選の1音のみでオルタードのアウト感を生む

先述の通り、曲中で1小節1~2秒ほどの間にオルタードをフレーズとして入れるのも中々難しい場面もあると思いますので、そんな時は厳選した1音だけを取り入れオルタードテンション感を醸しだせます。例えば、

移動先がメジャー主和音の場合

オルタードの【♯9th】を使うとメジャー主和音から見た【minor7th】でアウトサイド、

移動先がマイナー主和音の場合

オルタードの【Major3rd】を使うとマイナー主和音から見た【Major7th】でアウトします。

これらはコード進行四度上のトニックにつなげやすく、ナチュラルに軽く外した感が生みやすいので、この1音だけでも「こいつツボ分かってんなあ」みたいなハクが付きます笑。前後の弾きたいフレーズ運び等で外す1音を予め何か選んでおいても良いかもしれませんね。



NAC#'s Sharp Point.

いかがだったでしょうか。オルタードがどれほど不思議な響きの音階なのか、どう効果的に使われているのかは、実際に楽器を鳴らしながらでないと伝えにくい部分ですが、知識として知っておけば例えば練習リックや課題曲をコピーしたときなどに「この時のこの感じか」「だからこう弾いていたのか」と気づくきっかけにもなるでしょう。

オルタードフレーズからの次コードのトライアド(1.3.5度の何れか)を狙うとより帰結感と馴染む自然な繋がりが醸し出せる事が多いと思います。

ジャズはハズシの美学、とは言え、ぼくどうも最近さらに目が悪くなりナチュラルにポジションごとズレて間違えるケアレスミスが増えたので苦笑サイドのポジションマークに百均のハートのシールを貼ってみました。


ポジションマークのシール

割と気に入っています笑。ポイントはなるべく角がない形を選ぶと引っかかりにくいのと、紙製シールだと汗で溶けてすぐ剥がれるのですがPP製だと意外と持ちます。100円だし。マネしてもいいよ?。


その他、機材関連は【ギター&機材談話】、ギタリスト視点の音楽話は【ギタリスト音楽論】などよりぜひどうぞ。ほなまた。