ダイアトニックコードとディグリーネーム変換

ダイアトニックコードとかディグリーネームとかってなんか聞いた事あるけど実際なんなの?って方もおられるかもしれません。まあイマドキぐぐれば専門的な解説はごまんとでてくるわけですが、詳しく説明すればするほどイマイチ全体像がぼやけて解りにくくなってしまう気がしましたので、ここでは怠惰で面倒くさがりなギタリスト音楽論として簡潔明解に説明してみようと思います笑


ダイアトニックコードとは

一言でいえば「当該キーのスケール音のみで構成された各音階の和音」です。三和音トライアドコードは1・3・5度(四和音は+7度)と音を重ねているわけですが、それらを各キーの全音階に準じ積み上げ設定した基礎コードです。つまり、長調にせよ短調にせよ各キーで原則使わない音階を除いて各音階ごとに和音が構成されている極整えられたコード群と言えます。もちろん、コード進行する中でその他のコードを使わないわけではありませんが、ノンダイアトニックコードが増えるほど全体的な調性感は薄れたりブレたりしていくと言えるでしょう。あるいは、意図的に変調させ高揚感や浮遊感のようなニュアンスを演出する手法もあります。


ディグリーネーム変換とは

ダイアトニックコード群の各根音階に応じたナンバリングで、KEY(ルート)音をローマ数字で [] とし、以降一音階ずつ [VII] まで振ります。(※表記が難しい場合一般的なアラビア数字を用いる場合もあります。)例えばキーCの場合、C =Ⅰから始め、D=Ⅱ、E=Ⅲ、F=Ⅳ、G=Ⅴ、A=Ⅵ、B=Ⅶ となります。なぜわざわざ番号に変換し解釈するかと言うと、例えば移調した際でも [ I ] のキーに対して各音階で相対的に音程差とそれに伴うキャラクターを共有でき大変便利だからです。転回コードや裏コードなどで根音にシャープ♯やフラット♭を付与する場合は数字の前に記載します。(※例「♯IVm7」など。)


トニック [ ]

キーの主音。安定感や着地感を生む基礎コード。あるいは[Ⅲ]や[Ⅵ]。


ドミナント [ ]

キーに対して第5音。スケールのキャラクターや不安定さを強く醸すコード。あるいは[Ⅶ]。


サブドミナント [ ]

一時安定的なキーに対しての第4音でドミナントに次いで調性感を醸すコード。あるいは[Ⅱ]。


各ディグリーは基本的にこうカテゴライズされそれぞれに大まかな特徴や役割があります。同じ分類のコードは特徴的な構成音の有無によるものですが、「似た響きの別和音」と捉えたほうが誤解が少ないかもしれません。一般的なコード解説ではニュアンスとして安定や不安定という表現がされる事も多いのですが、このへんは聞いてなんとなく雰囲気を掴む方が正確に実感できると思います笑。音楽的なニュアンスやフィーリングを言葉で説明するのは本当に難しいですからね。


ハーフディミニッシュ [m7♭5 ]

ちなみに[Ⅶ m7♭5] は [Ⅴ7] ドミナントと同じ分類になりますが、 [m7♭5] に関しては「ハーフディミニッシュ」という別名もありダイアトニックコード中で唯一トニックに対しての「減5度」が使われる特徴的な和音です。響きの違いを実際に確認してみましょう。


ダイアトニックコード表

これらを踏まえた一目瞭然のダイアトニックコード&ディグリーネーム一覧表が以下の画像です。モノクロプリントアウトでも見やすい配色で大きめな画像にしてあります。


ダイアトニックコードとディグリーネームの一覧表

上段のディグリーネーム(ローマ番号)がメジャーキーで下段の数字がマイナーキーに対応しています。つまりは一度長調は六度短調と全く同じ事です。ちなみに表記は4和音ベースですが3和音時は表のセブンス(7度)音をとるだけです。関連のチャーチモードとスケールとコードの違いや雰囲気の覚え方もぜひご参考に。


ギタリストが調性とディグリーネームを意識するメリット

調性等は例えば作曲者や編曲家であれば当然知っていて損はない、というか極自然な基礎ですので、仮に音楽理論として知らずともなんとなくこんな構成にまとまってくるケースも多いと思います。なので知らないから作品としてどうという事ではないと思いますし、そもそもクリエイターとしての芸術発想はあらゆる全てにおいて100%自由ですので、仮に知らずともそれ故独創的な表現が生まれる事もあると思いますが、演奏家としてのギタリストが曲の調性を意識する最大のメリットはなんといってもアレンジやアドリブにおいて効率的に一定の道標が出来る点です。


エレキギターの指板

先述の通りダイアトニックコード群は基礎音階のみで構成されているので、逆も然り、キーが判ればスケール(音階)も概ね確定するので基本的に使う(と良い)音も見えてきます。もちろん絶対そうするべきという意味ではありませんし、インターチェンジ等の部分転調も当然あり得るのですが、少なくとも判断基準にはなりますし、コード展開や生まれる雰囲気の推測もし易くなりアレンジやソロのメロディー構築に活かせます。

また音楽家同士の共通認識も容易に得られます。例えば即興セッション等で「キーCで、Ⅳ-Ⅴ-Ⅲ-Ⅵ ね」と言えば、使う音階はCメジャーで実際のコード進行は

F△7 - G7 - Em7 - Am7

となるわけです。(★上記の様に省略して言い表す場合もありますが、実際の書き方はダイアトニック通りでも「IV△7_V7_IIIm7_VIm7」と表記するケースが多いです。)

この辺りが脳内で瞬時に出てくるようになるには高度な音楽的理解が必要と言えますが、幸いギターという楽器は「移動ド」で捉えやすく変調しやすい構造の楽器と言え、指板上のポジションパターンやコードフォームの形をそのまま平行移動で移調に対応できる便利な楽器ですので必ず調性を意識する癖をつけましょう。ちなみに、ド定番のコード進行ならディグリーネームでも紹介されていたりするので自分で色々なキーに変換して試し弾きしてみるのも良い練習になるはずです。

こちらに調性の実感にも役立つ定番のギター循環コード進行例を紹介していますので併せてご参考に。


ギター指板上で見るディグリーネームルート

更に効率化を図る為、移動ルートを型で覚えてしまうのも効果的です。5弦6弦を主音ルートとしたメジャーキーディグリーネームの基本的なギター指板配置イメージテキスト図例は次の通りです。6弦ギターチューニング基準音の覚え方とセットで把握しましょう。(※本来ローマ数字を便宜的にアラビア数字で表記。)


5弦キー想定主眼ルート


五弦…||||||||||||||…
六弦…||||||||||||||…

5弦の1~4度,6弦の5~1度あたりを中心に考えると覚えやすいかもしれません。


6弦キー想定主眼ルート


五弦…||||||||||||||…
六弦…||||||||||||||…

5弦の3~6度,6弦の7~3度あたりを中心に考えると覚えやすいかもしれません。


どの根音を選択するかは移動のし易さや必要なコード型(ボイシング)などによってその都度臨機応変に使い分ける事になりますが、瞬時にイメージできるよう度数差の位置関係を把握しておくと迷いが減り初見でも対応しやすくなるでしょう。ベースで言うと「3・4弦」と同様ですので、条件反射できるまで覚え込もう。

メジャーキーとマイナーキーでコード表等を共有できるのは平行調ゆえなのですが、この辺りよく解らないという方はメジャーとマイナーの平行調的恋人関係(スケール編)をぜひどうぞ。