チャーチモードスケールとコードの違いや雰囲気の覚え方
みんなちゃんと毎日ギター練習してますか?ほんのちょっとつま弾くだけぐらいの気分でも極力毎日触りましょうね。ギターを抱えたら自然とそれなりに弾きたくなるものなので「10分だけ練習するつもりだったのに気づいたら1時間経ってた」とかになりますから。あと、
単に楽しむ「プレイング」と、
暗記の為の「プラクティス」と、
上達目的の「トレーニング」は、
きちんと分けて意識した方がバランスも認識できるしより効果的ですよー。
さて本題、
チャーチ(あるいはグレゴリアン)モードスケールって聞いた事ありますか?現代ではダイアトニックスケールとも呼ばれるグレゴリオ聖歌により体系化された全音階の教会旋法ですが、なにかスケール(音階)やコード(和音)やキー(調性)の概念とごちゃまぜに超アバウトな雰囲気で漠然と解釈している方が多い印象なのと、ギタリスト向けに特化した解り易い解説が世に少ない気がしたので、今回は久々にお勉強回としてこの辺り整理して簡潔に説明してみようと思います。
モードスケールはダイアトニックと連動
した理解が必要です。チャーチモードスケールの色々な名前を見て、なにか全く違う様々な種類の音階がある風に捉えている方が意外と多いのではないでしょうか。単語直訳で言えば「流行・様式」等になりますが、音楽的には先述の通り「旋法」を意味し、基本的には当該全音階スケールの中で展開される指針やコンセプトを指します。つまり設定や認識の違いの差。ダイアトニックコードがありますよね?あれに対応した形で構造的には大雑把に解釈を言えば「調性に対してここが根音の場合は○○モードなムードて感じね」くらいの話なんです。つまりキーに対応した基礎コード群に連動した形で同じく存在するのが各7モードスケールです。
例えば Key=C として、
- C. Ionian(イオニアン)△7
- D. Dorian(ドリアン)m7
- E. Phrygian(フリジアン)m7
- F. Lydian(リディアン)△7
- G. Mixolydian(ミクソリディアン)7
- A. Aeolian(エオリアン)m7
- B. Locrian(ロクリアン)m7♭5
の、7種類(パターン)は実音的には全部ただのCメジャー(平行調Aナチュラルマイナー)スケールでインターバルの切り取り方が違うだけ。これをレラティブモード(関係)と呼びます。もちろん各主音毎に区切っているので各度数の音程差は変わりそれに伴って音の価値も変わりますし、それぞれの特徴を強く醸すキャラクターノートも変わりますが、広義ではあくまで単純に全音階のモーダル解釈や使い方の話。「〇〇でもあり同時に××でもある」てのは音楽の世界では割とよくある話です。
で、
これらは対応するキー以外で絶対使ってはいけないわけではなく、基本的にはバッキングコードの進行や構成音に応じて使い分けるのが自然ですので、キー対応のダイアトニックスケールと違うから使えないという事ではありませんし、モーダルインターチェンジなど変化の演出として部分的に使う場面も有りうります。
ちなみに、
チャーチモードの種類(名前)の覚え方
としては日本語だと、1度 Major から順に頭文字を並べた「井戸振り見えろ!(イドフリミエロ)」と覚えるのが定番でしょうか。ちょっと意味不明ですが、きっとそこに井戸があると信じて念じつつ恐る恐る振り返って見てみる感じなのでしょう笑。1度△モードを「アイオニアン」と呼ぶ派もいますが実際半々くらいでしょうか。
キャラクタリスティックノート(特性音)とは
各モードの中で最も強くその特徴を醸す重要な音で、旋律やフレーズを構築する際は比較的早いタイミングか目立つポイントで使うとそのモードの雰囲気を出しやすい音です。他のモードと差別化されている象徴的な音と言えますので、特に主音との関係性を意識しましょう。
ギター指板上の各モードスケールポジションと対応コード
ここは一応ギタリスト向けのギターブログですので笑がんばって指板上でのスケールのポジション一覧画像をスリーノートパーストリング(1弦3音)ベースでまとめ指板図を作りましたのでトレーニングにお役立てください。(カッコ)はダイアトニックに対応したコードの響きです。「主音はトニック=T1」として「各キャラクタリスティックノート=赤&アンダーバー付き」で表記していますのでモノクロプリントアウトにしてもまあ分かるかなと思います。各モードのインターバルも記載しますので実際に奏でてみて音階が醸す雰囲気を感じてみましょう。ちなみに、1・2弦の左上グレー音は異弦同音でコードフォームとの親和性が高いポジションなので併せて把握すると実用的で便利ですよ。
イオニアン(1度 MAJOR7)
|T1|・|M2|・|M3|P4|・|P5|・|M6|・|M7|
全全半全全全半。いわゆる一般的なメジャースケールである Ionian の特性音はsus4でお馴染みの「完全4度」ですが、コードトーンであるM3から見ると半音差のアボイドノートと言えるのでP4(11th)の使い方には注意が必要。何よりそのスタンダードさが既に最強の特徴のクラシックモードといえるでしょう。
ドリアン(2度 minor7)
|T1|・|M2|m3|・|P4|・|P5|・|M6|m7|・|
全半全全全半全。P5と当たるアボイドがちな短六度を避けた「長6度」が特性音の Dorian はマイナーセブンスベース。ちなみにドリアンの短7度を半音上げ長7度にするとジャズセッションなどでも多用されるオルタードスケールを内包するメロディックマイナースケール(旋律的短音階)になります。
フリジアン(3度 minor7)
|T1|m2|・|m3|・|P4|・|P5|m6|・|m7|・|
半全全全半全全。長3度を加えると8音階のスパニッシュスケールとなるイキナリ半音の「短2度」が特性音の Phrygian もマイナーセブンス型。インパクトがあり印象の転換などにも有効で、壮大で険しい冒険の旅が始まりそうな予感しか勝たん民族的モード笑。
リディアン(4度 MAJOR7)
|T1|・|M2|・|M3|・|♯4|P5|・|M6|・|M7|
全全全半全全半。M3との喧嘩を避ける唯一の特性音「増4度」が生じる Lydian は明るい音列の中さらにドラマチックさを想起させるメジャーセブンス型。キーの主張が薄れるメジャーコードが続く場面で使う事が多く四度がモーダルなニュアンスを醸す。
ミクソリディアン(5度 7th)
|T1|・|M2|・|M3|P4|・|P5|・|M6|m7|・|
全全半全全半全。特性音「短7度」と長3度が共存する Mixolydian はドミナントセブンスコード型。わくわくするような明るい雰囲気ベースの中にほんのり薫るフラットセブンの洋楽的なブルージーさが特徴で、7thコード一発展開でナチュラルにフィット。
エオリアン(6度 minor7)
|T1|・|M2|m3|・|P4|・|P5|m6|・|m7|・|
全半全全半全全。いわゆる一般的なナチュラルマイナースケールである Aeolian の特性音は「短6度」。メジャースケールの平行調で馴染みもあるため比較的扱い易いモードと言えるでしょう。ちなみにエオリアンの短7度を半音上げ長7度にするとハーモニックマイナースケール(和声的短音階)に。
ロクリアン(7度 minor7♭5)
|T1|m2|・|m3|・|P4|♭5|・|m6|・|m7|・|
半全全半全全全。モードスケール中唯一「減5度」を含むハーフディミニッシュの Locrian は「短2度」も特性音とされるm7-5型。必殺技か魔法か何かが発動しそうな怪しくも不思議な浮遊感や期待感を醸す。少々特殊で使用頻度は7モード中で最も低いかもしれません。が、故に上手く使えばかなり印象深い。
コードとの深い関係性
紹介した画像の通り、各スケールポジションと対応するダイアトニックコードは密接に繋がっている事が解ります。逆に、コードの型をイメージすれば自然とそのモードが浮かび上がってきますので絶好の道標となるはずです。このあたりは「ケイジド(CAGED)システムで覚えるペンタトニックスケールの活用法」の考え方と全く同様ですね。
少々余談ですがたまに、VIIm7-5(Φ)などで♭5を端折って普通のマイナーセブンスコードをフルで弾いてる人いますけど、それ完全5度がっつり鳴ってるのでホントやめてね汗ぶち壊しレベルでぜんぜん響き違うコードですから。せめてP5音を抜いて弾くか、同dim7の方がまだいくらかましです。ハーフデミニッシュはベーシックなダイアトニックコードのひとつですのでギターコードスリーノートセブンスボイシングなどをご参考にぜひマスターを。
モードスケールは変化音を覚えよう
モードスケールの違いは系統的に把握し変化音の差を意識して覚えるとより実践的に使いこなせるようになるでしょう。また、各音階の[2度][4度][6度]はそれぞれテンションノートとしての[9th][11th][13th]ですので併せて認識しておきましょう。
メジャー系リディアンベース
メジャー系モード3種はリディアンから段階的にに変化させると把握しやすいかもしれません。増4度を半音下げ完全4度にすると通常メジャースケールの「イオニアン」、長7度も半音下げ短7度にすると「ミクソリディアン」です。
Lydian
|T1|・|M2|・|M3|・|#4|P5|・|M6|・|M7|T8|
Ionian
|T1|・|M2|・|M3|P4|・|P5|・|M6|・|M7|T8|
Mixolydian
|T1|・|M2|・|M3|P4|・|P5|・|M6|m7|・|T8|
Lydian7th
|T1|・|M2|・|M3|・|#4|P5|・|M6|m7|・|T8|
▲補足情報ですがリディアンの長七度のみ半音下げた場合は
オルタードスケールも内包する Lydian7th
になります。
マイナー系ドリアンベース
マイナー系モード4種は第二モードであるドリアンをベースに考え変化させます。ドリアンから長6度を半音下げるとナチュラルマイナー「エオリアン」、長2度も半音下げで「フリジアン」、さらに完全5度も半音下げ減5度にすると「ロクリアン」です。
Dorian
|T1|・|M2|m3|・|P4|・|P5|・|M6|m7|・|T8|
Aeolian
|T1|・|M2|m3|・|P4|・|P5|m6|・|m7|・|T8|
Phrygian
|T1|m2|・|m3|・|P4|・|P5|m6|・|m7|・|T8|
Locrian
|T1|m2|・|m3|・|P4|♭5|・|m6|・|m7|・|T8|
NAC♯ギター練習方法と習得のコツ提案
上記既出の指板ポジション画像はすべて6弦トニックですが、5弦トニックにする場合4度下モードの4度スタートポジションが(音程以外)そのまま適応されます。あるいは、同じポジション配置のまま「2弦で半音上にズレる」と覚えても良いのでご参考まで。
で、これらを「Cイオニアン~Dドリアン~Eフリジアン~…」と並べて順に弾いたところで、それは単なるCメジャースケールのポジション違い(レラティブ関係)なだけで、各モードの雰囲気や特性音の把握が難しくなってしまうので、それよりは例えば全てド主音にして響き方の違いやボイシングの変化を噛みしめながら弾き分けるパラレルモード練習の方が各モードスケールの特徴や理解を深めるには有効かつ実戦的と言えます。
下降フレーズの場合も弾き始めに当該コードを鳴らすかトニックからスタートしトニック解決で終わった方がその音階の癖や特徴を感じやすいはずです。上図3ノートパーストリング6弦トニックの場合「6弦人差指」「4弦2つ目」「2弦3つ目」の位置が全てP1トニックになりますので漫然と形だけ覚えるのではなく主音を必ず意識しましょう。
キャラクターノートに関してはトニックとのインターバルと相関位置を強く意識して「そのモードの時には強く長めに鳴らしてやる」くらいの気分でいたほうがサウンドしやすく把握も習得も早くなるでしょう。
ぼくも気抜いてぼーっとしたりちょっと他の事考えると(特に下降時)けっこう普通にうっかり迷子って間違えちゃうので汗そんな緊急時は強引にフレーズにクロマチック挿入するかしれっとキーのペンタで一旦落ち着くか、
スライドアップダウンでブゥン
とか
ピックスクラッチでキュイ~ン
とかでどや顔でイケイケにごまかすのが実戦での最大のコツですね笑。難易度としては少々高めですがこの基礎がしっかり理解できると音楽的レベルが断然上がるのでガンバロなあ。で後日、
演奏動画
アップいたしました。スリーノートパーストリングで3音ステップと3度ステップのウォーミングアップです。全モードキーCのパラレルモードで上昇下降を弾いています。
できるだけ伝わりやすく弾いてみたつもりですのでご参考になれば。下の画像が指板の実音一覧表です。
関連記事としてメジャーとマイナーの平行調的恋人関係(スケール編)や、ダイアトニックコードとディグリーネーム変換の解説などもありますので、お時間許せばギタリスト音楽論もぜひどうぞ。トップの表紙画像ネック2本はメンテついでの拭き上げ大掃除時です。あまり深い意味はありません笑。ギター&機材談話をお求めの方はこちらから。