アッパーストラクチャーの使い方


アッパーストラクチャーとは、例えばピアニスト等であれば左手でローワーコード、右手でアッパーコードと1スケール内で2つ以上の異なるコードを組み合わせ展開するポリコードアプローチですが、ギターではコードを同時に複数鳴らす事は構造上極めて限定的ですので、和音に対する別の視点からの表現手法という意味合いが強くなります。今回は主にギタリストが使うアッパーストラクチャー的アプローチを紹介&解説します。

まず前提として、1コードオンリーにせよコード進行するにせよ、楽曲には暫定的にであれ随時「調性」が存在し、同時に各コードトーンにも相応しい各チャーチモードスケールが潜在的に内包されています。小難しい言い回しになってしまいましたが理解を深めやすく超噛み砕いて言えば、


それぞれの音にキャラクターがあるよ

とか

みんな生きているんだ友達なんだ

とか

みんな違ってみんな良い


みたいな至極ストレートでシンプルな話ですので音楽理論と毛嫌いせずじっくり落ち着いてお読みください笑。そんなことで今回は使用頻度の高い「メジャー」「マイナー」「セブンス」に対応するアッパーストラクチャーについて順を追って説明します。(※読みやすさを優先しダイアトニックのディグリーネームを漢数字で表記させていただきます。)まず各コードトーンをスケール上で把握する事が重要です。


メジャーコードの場合

メジャーセブンスコード時の場合、基本的にはメジャースケール(イオニアン)ではなく「リディアン」モードが適用されますので、ルートを四度と想定した場合の各コードトーンは

  • 長三度:六度m7 (エオリアン)
  • 完全五度:一度M7 (イオニアン)
  • 長七度:三度m7 (フリジアン)

四度メジャーセブンスのコードトーン

となります。


マイナーコードの場合

マイナーセブンスコード時の場合、基本的にはナチュラルマイナースケール(エアリアン)ではなく「ドリアン」モードが適用されますので、ルートを二度と想定した場合の各コードトーンは

  • 短三度:四度M7 (リディアン)
  • 完全五度:六度m7 (エオリアン)
  • 短七度:一度M7 (イオニアン)

二度マイナーセブンスのコードトーン

となります。


セブンスコードの場合

ドミナントセブンスコード時の場合、ハズシのためのオルタードスケール使用など特殊な状況でなければ「ミクソリディアン」モードが適用されますので、ルートを五度と想定した場合の各コードトーンは

  • 短三度:七度m7-5 (ロクリアン)
  • 完全五度:二度m7 (ドリアン)
  • 短七度:四度M7 (リディアン)

五度セブンスのコードトーン

となります。


これらの理論を踏まえると、ベースの各コード上で様々なレラティブモードやそれらに対応した別コードもナチュラルにサウンドする事が分かりますが、ギター的なアプローチでおすすめなのは

アッパーストラクチャートライアド (UST)

です。なんか必殺技の名前みたいで格好いいですよね笑。トライアドは各コードの「一・三・五度」の三和音ですが、ベースコードの構成音ではなく、各コードトーンからさらに派生する各々のトライアドを導入するフレージングです。メリットとして

ルート音を避けることができます。

例えば「C▲7」コード上で完全1度の「」を弾くのが当たり前すぎてつまらないという場面などで UST アプローチをチョイスするだけで自然とルート音を回避する事ができます。また段階的に

テンションノートを取り入れる

フレーズでベーシックな音使いだけではないジャズやフュージョンなどで多用される少し変わった印象の注意を引く音使いにすることができます。なんかハズレた感じだけどよく聴くとお洒落にサウンドしてるみたいな。例えば各コードでの

五度からのアッパーストラクチャートライアド

其々を例に挙げると、

Lydian Major7の完全五度からのトライアド

  • Ionian (Major) の主音:完全五度
  • Ionian (Major) の長三度:長七度
  • Ionian (Major) の完全五度:9th

Dorian minor7の完全五度からのトライアド

  • Aeolian (minor) の主音:完全五度
  • Aeolian (minor) の短三度:短七度
  • Aeolian (minor) の完全五度:9th

Mixolydian 7th の完全五度からのトライアド

  • Dorian (minor) の主音:完全五度
  • Dorian (minor) の短三度:短七度
  • Dorian (minor) の完全五度:9th

となりベースコードの根音と三度が抜け、代わりに其々のナインス(2度)トーンが加わることでコード構成音にはない音価の彩りを加えることができます。七度から始めるアッパーストラクチャーやさらに四和音に広げた展開では「11th」や「13th」のテンションノートも代替する形になりますので取捨選択のバリエーションはさらに増えます。


アッパーストラクチャーペンタトニック

各モードのアッパーストラクチャーに適するメジャーペンタやマイナーペンタなどのペンタトニックスケールも当然そのままフィットします。ただしこの場合ルート音(当該コードの完全1度)を避ける目的ではなくテンションノートを取り入れた5音階にするなどフレーズの音列にバリエーションをつけたい時などの変化球的な使い方になります。

注意点として

ポジション型としての配置は流用できますが音価の位置が変わり通常アウトフレーズやチョーキングできるポイントの先がアボイドノートになっていたりすることがあるので、アッパーストラクチャーでペンタを弾く時はベンドの扱いは極慎重に。

もし間違えたらキメ顔で素早くスライドぶぅん。


NAC♯'s Guitar Approach.

メジャーやマイナーのトライアドが弾ける状態にさえしておけば、アッパーストラクチャーのように視点を変えたり解釈を広げるだけでテンションノートを取り入れた複雑な音使いも容易に可能ですので利用しない手はないです。またUSTの理解は代理コードの把握にも繋がります。セブンスコードのサードUSTでは少し馴染みの薄いハーフディミニッシュ(減五度)が出てくるので、まずは形も覚えやすく指板上でも見えやすい「完全五度からのトライアド」からチャレンジしてみると良いかもしれませんね。

急に寒くなったので慌てて衣類のアッパーストラクチャー実施中@NAC♯Guitar



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