エモいなたいギター鳴り考察
イナタイ・ギターって聞いた事ありますか?そんな名前のメーカーじゃありませんよ笑。言葉の由来としては「田舎臭い」とか「泥臭い」「素朴」な感じなどからきているようですが、音楽シーンで使われる意味としてはそれほどネガティブな雰囲気はなく、むしろ「エモいソロ」や「渋い音色」「格好良いギター」みたいな好印象なニュアンスで言われる事が多いように感じます。
クールめなジャズ等とは対極的な、トラッドめなソウルやブルースなんかの感じでしょうか。エモいの由来が感情を揺さぶるような魅力と考えると大人なギタリストとしてはなんとも憧れるわけです。良い意味の物懐かしさみたいなノスタルジーだったり、魂の叫びみたいな情熱の発露だったり。ジジイになるとどんどん感情が希薄(穏やか?)になって仏に近づくからね苦笑。
そんな事で、いなたくてエモいギターの弾き方や鳴り方につながるアプローチをぼくなりに分析してみます。いつも同じ演奏になっちゃうなーとか、曲やシーンで色々テイストを弾き分けられる味のあるギター弾きたいなーとお悩みの方のご参考やヒントになれば。
いなたいギターの音色とは
まず前提いなたいギターの音作り的にはあまり歪ませ過ぎない方が良いかもしれません。歪み成分が増えるほどよりハードやポップスなテイストにふれ、生々しさが薄れて均一に整いすぎてしまうというか、ギター自体の鳴りがどんどん影を潜め電子音風味な音色に近づいてしまううえ、ピッキングのニュアンス等も出し難くなります。歪ませるならエフェクターはディストーションよりは甘いオーバードライブやブースター、アンプのゲインだけで軽く歪ませるくらいのクランチ・サウンドでも十分でしょう。人間の生身のしゃがれた歌声をイメージすると良いかも。故にコンプレッサーも薄化粧で。エモい方向重視で考えるなら深いハイゲインサウンドも当然ナシじゃないのですが、いずれにしても教科書のお手本リックみたいに綺麗に弾きすぎると淡々とした味気無さとも紙一重なので、場面での客観的な判断で時には激しく弾いたり敢えて弾き方をラフに少々崩すトライも必要かもしれません。
強弱(ダイナミクス)をつけエモさを醸し出す
ここでいうダイナミクスは音量差で物理的に弦を弾く強さです。わりと短いフレーズの中で強く弾く部分と弱く弾く部分を意識して織り交ぜ意図的に強弱をつける事でエモさが強く醸し出せます。例えば、低音弦は耳を澄ましギリギリ聞こえるくらい弱く鳴らし、高音弦ではしっかり強く短く弾く、とか。耳を澄まし引きつけてから強いアタックでちょっとドキッとさせるみたいな狙い方。部分的にブリッジミュート等を混ぜ音質的に緩急を作るのも効果的。音がかすれて消えていくまで伸ばし続けるとかも息を飲んで見守られる事うけあいです。逆に、クールで綺麗に弾きたい場面では一定の強さで滑らかに通すなどフレーズや構成で弾き方を明確に変えると曲中の流れやメリハリも作れるでしょう。
タメのテンポ~レイドバック等のリズムで心揺さぶる
完全なイーブン(ジャストタイミング)ではなく少々タメたタッチを作るのもブルージーでいなたい雰囲気によく合います。ときどき演歌歌手なんかがやけにモタモタ?テンポをずらして歌う方がいらさりますがまあああいうノリでリズムを揺さぶる感じ。3連符の部分挿入なども同じような効果があると言えるかもしれません。音を伸ばす最後の音だけ一瞬タメても良いですし、小節ごとにタメタメしても良いでしょう笑。ただし、急にモタった感じにならないよう絶妙のタイミングが命ですのでジャストを把握するリズム感と細心の注意が必要ではあります。タメを通り越して完全に一定幅ずらし続けて弾くテクニックをレイドバック奏法といいますが、それもそれでジャジーでまた違ったノリで良き。
ダブルストップなど副音を織り交ぜエモくハモる
例えば単音のメロディーソロなどでダブルストップなどの副音を織り交ぜると、その瞬間ハーモニーのようなコード感が強調できエモいです。複音とは文字通り弦を同時に2本(あるいは3本)で部分的にハモらせる重音フレーズでボーカルとコーラスのハモリのような厚みをもたせられます。オクターブ奏法もこの範疇。その折ピックと指を併用するチキン(ハイブリッド)ピッキングにしても良いでしょう。音は3度差や4度差が多く基本的には都度コードやスケールに準じるわけですが「ギター指板とチューニング基準音の覚え方」や「ケイジド(CAGED)システムで覚えるペンタトニックスケールの活用法」、「チャーチモードとスケールとコードの違いや雰囲気の覚え方」などもご参考に。
ブルーノートでエモーショナルないなたい音使い
ブルーノートとはスケールから外れているのに妙にハマるアメリカンブラックミュージック的ブルージーな音程で「減五度」が最も有名です。そのネーミングの通り完全に憂鬱方向なテイストで、使い処を誤るともはやただの鬱ですが苦笑ここぞでハマるとびっくりするレベルでカッコよし。通過音的に一瞬だけさりげなく使ってもしっかり効きます。ちなみにトニックに対し♭3・♭5・♭7を取り入れたものをブルーススケールと言います。詳しくは「ペンタに1音足してアドリブソロフレーズの幅を広げる話」でどうぞ。
ビブラートやトレモロでエモいニュアンス付け
弦を揺らして音程を震わせるビブラートはドラマチックに聴かせるテッパンの表現手法ですよね。トレモロシステムが付いたギターならそれもエモくもいなたくも装飾できます。揺らし方(幅や速度)やかけるポイントなどで様々なニュアンス付けが可能ですのでぜひ使いこなしたい技術ですね。過去記事「エレキギターソロを上手ぽく弾くテクニック集」でも色々解説していますのでよければご参考に。
その他の効果音や装飾音も効果的
ギターにはその他にも様々な演奏テクニックがあり、弾き方を工夫し少し変えるだけで伝わる印象がガラリと変わるアナログ楽器です。中でも効果音や装飾音的な奏法はダイレクトな感情表現に有効な方法と言えます。アコギ奏者がボディを叩いてパーカッションを入れるとかもその一種。敢えて音程を鳴らさず弦をパーカッシブに弾くゴーストノート、連符を生むブラッシング、ピッキングのニュアンスをなくし滑らかに音程を移動するスライド、荒々しくハウらせるフィードバック、ハーモニクスやピックスクラッチやチョッピングなど、楽典的な側面とは別のコンセプトですが表現手法のバリエーションとして鳴らし方やSE的効果音も駆使しよう。
顔の表情や動きやポージングで分かりやすくアピール
これねえ、冗談みたいに聞こえるかもしれないけど真面目な話意外と大事かもよ。むしろ素人さん相手にはこっちの方が重要なファクターかもしれない演出面。弾き方だの音使いだのじゃなく、気持ち良さそうにノリノリで踊ったり悦に入ってソロ弾く姿を見せることで「あぁよくわかんないけどなんか楽しそうに弾いてるな。知らんけど。」でオールオッケーだったりします笑。ぼくむかしミスった時に焦って照れ苦笑いする悪癖があったんだけど先輩に「知らんぷりしてドヤ顔でやり過ごせばあんまり気づかないヨむしろやっちまった顔で今ミスったって思われるから」って言われて目から鱗ったことあって、そういう演者のエゴ抜いて色んな見方をする大勢の観客の前にいなきゃって。一定以上レベルの高いギタリストが聞いたら「あ今の間違いでしょ」って気付くんだろうけど、大多数の一般人そんな粗探す厳しい目じゃなく楽しむ為に見てるからね。
切ない顔で弾けばエモくなるし、
渋い顔して弾けばいなたくなるし、
仁王立ちのキメ顔で弾けばなんとなく格好良いイケメンに見えるんでしょ。
知らんけど笑。