ギター指板材質の違い解説
ギターネックの指板(フレット面フィンガーボード)に使われる木材には幾つか種類がありますが、ギタリストによっては「この材じゃなきゃ弾き難くて嫌だ」と感じる人もいるほど弾き心地や音質にも影響する要素です。良し悪しや優劣というより好みの問題ではありますが、定番の指板材の特徴や違い、メリットデメリットなどをまとめてご紹介します。
ローズウッド(Rosewood)指板
日本では紫檀(シタン)とも呼ばれる濃い赤茶や焦げ茶色の木材で、エレキギターはもちろんアコースティックやクラシックギターなどにも幅広く使用されてきた最もド定番の指板材。個体差やバラツキは大きめで木目のつまり具合などによって板面の肌触りや滑り心地も変わるが、比較的滑りにくく光沢も少なめ。「インディアンRW」「マダガスカルRW」「ホンジュラスRW」と品種や産地によってもグレードが違い、通称ハカランダ(Jacaranda)と呼ばれる「ブラジリアンローズウッド」が最も高品質で最高級とされる。1992年ワシントン条約による輸出規制や材料費高騰などを背景に、近年ではローズウッドの代替品として特性の似た木材 パーフェロー(Pau Ferro)やローレル(Laurel)が使用される事も増えている。
画像のローズウッド指板は同モデルの同じネックで同じような状態維持管理をしていますが、個体差で指板面の木目具合や色味もこれだけ違います苦笑。触り心地も少々変わるので購入の際は現物に触れて確かめるのがベストでしょう。(未確認ですが価格帯推測でたぶんインディアンローズウッドと思われます)
音の特徴
後述のメイプル指板と比較すると、ミドル~ローレンジに寄った木材の鳴りらしく粘りのある温かな発音特性。しなやかな柔軟性を併せ持つ反面、剛性では劣りサステイン面は少々不利とされる。
手入れ方法
基本的に無塗装の木材むき出しで気温や湿度の変化にも弱いので、ライブなどで長時間ハードに弾いた後や弦交換の清掃時にレモンオイルなどでの定期的な保湿や油分補給が推奨される。人間のお肌かよな。比較的柔軟なので弾き込みによる凹みや打コンによるえぐれなどの補修加工やフレット打ち換えなどはしやすい。
メイプル(Maple)指板
白っぽい明るいベージュや黄色い木材で、エレキギターではローズウッドに次いで使用される事の多い指板材。和訳は「楓(カエデ)」となりますが木材としては品種や産地により細かく区別されます。比較的堅くネック材としても使用されているため過去にはメイプルネックに直接フレットを打ち込むワンピース構造のギターネックもあったが、生産性や強度面から現代では同素材を貼り合わせる貼りメイプルが主流。基本的に板面は塗装でコーティング保護されるが、塗料やその塗り方(厚みなど)も様々で、よく弾く場所の板面塗装が剥がれてくる劣化も珍しくなく、明るい指板材故黒ずみや目立つ汚れを嫌って敬遠する人も少なくない。が、それがビンテージライクで逆に良いという人もいるので奥深い笑。
ごめんぼくはいまメイプル指板持ってないので先日リハスタで借りたレンタルギターです。ローズ指板と違い銀のフレットと指板面色のコントラストが低いので黒いドットインレイがより目立ち見やすくなる点もメリットかと。あかんそもそも前髪完全に鬼太郎状態で左の視覚が死角やんな汗。塗装コーティングされているので感触の個体差は殆ど無いものと考えて良いでしょう。
音の特徴
先述ローズウッド指板と比較すると、特に高音帯域の発音が明瞭なため音色はトレブリー傾向。より堅くフレットを支え振動を伝えるためサステインが伸びるとされる。
手入れ方法
ギターボディと同様に板面も塗装されているので、普段の油や汚れを拭き取る程度の清掃で基本的にはメンテナンスフリーと考えて良い。が、ラッカー塗装で薄塗りの場合などは特に板面塗料が剥がれやすく、一度剥がれ始めるとその部分から連鎖的にポロポロ取れ黒ずむ。木材を汚したくない場合は早めに塗りなおすリペアが必要。リフレット時は板面塗装工程も発生するため料金が高め。
エボニー(Ebony)指板
黒檀(コクタン)とも呼ばれるヴァイオリンやウッドベースなどにも使用される高級木材。ローズウッドよりも色黒で硬く高密度である事が多いため楽器のほか家具や彫刻などに使用される事も多いが、絶滅危惧種指定されており価格は高騰の一途。ギター指板ではハイエンドな高級器のみに使用される。滑りも良く硬いため摩耗が少ない反面、欠け易く脆い面もあるため取り扱いも注意が必要、故にリフレットなどの工賃もメイプルよりさらに高額になりがちです。
環境問題なども踏まえ最近ではエボニーの代替品としてパルプ繊維・フェノール樹脂・カーボンなどで合成した リッチライト(Richlite)という人工素材が開発されギブソン・ブランド等で積極的に使用され始めている。
音の特徴
端的に言えばローズウッドとメイプルの中間音色とされ、高剛性も相まって素の生音で音楽的にバランス良く澄んだ発音で豊かに鳴り響く。艶やかで黒々とした見た目の美しさも特筆に値する特徴。
手入れ方法
日常メンテナンスは無塗装のローズウッドと概ね同様ですが、硬い分よりデリケートで乾燥によるヒビ割れ等に注意が必要。故に成形加工難易度も高め。
NAC♯'s Guitar Fingerboard Considerations
ぼくいまローズウッド指板のギターばかり所有しているのでそれが一番弾き慣れてる感触っちゃそうなのですが、個人的にはメンテナンスや保管環境に気を使わなくて済む(ぽい)リッチライトにめちゃめちゃ期待してるんだけど、フェンダーではまだ(たぶん)採用されてないからちゃんと触った事ないのよね汗。ちなみに冒頭ローズ指板メイプルネック2本の画像は昔のメインギター FENDER JAPAN JAGUAR SPECIAL HH です照。
最終的には様々な要素が嚙み合っての音色だし、指板R(ラジアス)などと同様、木材だけで選ぶわけじゃないけど、一要素として各々の特性や注意すべき管理方法は概ね把握しておくと良いよな。
くれぐれも、
入手困難なエボニーが買えないからと言って茶色い紫檀を
黒マッキーで塗り潰す
ような稚拙な暴挙は指板を痛めるだけだから慎めよ笑。
ちょっと考えた事ある@nac_guitar