ギター指板R(ラジアス)による弾き心地の違い


ギター初心者さんなど不慣れな方が製品カタログスペックを見る中で「指板R」と目にし、指板(フィンガーボード)ならばまだしも、


アール? (´・ω・`) であーる?


と諸項目の中で指折りに何の事か理解しにくい要素だと思います。そこで、指板Rとは一体何を表すのか、弾きやすさなどにどういう特性や影響があるのか、要点を解りやすく説明します。


Fingerboard Radius

指板Rとは

ギターネックのフレットが打ち付けてある弦を押さえる指板面の曲がり具合の事で、円半径のラジアス(ラディアス)の頭文字「R」と記載されていることがほとんど。円の半径の長さで曲率を表し、高速道路やレースサーキットなどでカーブの度合いを表す場合は「メートル」単位ですが、ギター指板の場合は「インチ」あるいは「ミリ」表記(1インチ=25.4ミリ)となります。この距離(長さ)単位の記載がない事が多いのは少々不親切ともとれますが「指板のどこかの長さの実寸」かという漠然とした誤解を防止する意図もあるようです。計測には専用のラジアスゲージやスケールを使用します。また、同じブランド・同じ種類のギターでも型番やモデルによってRが変わるケースもありますので要チェックポイントです。


エレキギター指板Rの主な種類とその特徴

指板のR具合には大凡の範囲があり、その中で一定の傾向やバリエーションが伝統的に存在しますのでよくある主なRの種類とその特徴をまとめます。シグネイチャーなど一部のコンセプトモデルや最近のモダン系ギターなどで変則的なものも存在しますが、スペックの目安としてもご参考になると思います。


指板R種類の表記イメージ

エレキギターの円柱指板Rには段階的に概ね下記4種ほどに分類できます。

  • 7.25 inch(184mm)R
  • 9.5 inch(241mm)R
  • 12 inch(305mm)R
  • 16 inch(400mm)R

円柱指板とは一定の曲率が最後まで続くスタンダードな指板。上図の小さい円イメージの最も丸い部類で「7.25インチR」から、大きい円イメージの平らに近いもので「16インチR」程度。多くの指板がこの範囲に収まる曲面になっています。

尚、アコースティック系の場合は「10~20インチR」程の範囲で様々、ネックを握り込むロックフォームで弾く事があまり無いクラシックギターや、物理的に指板幅が狭いミニギターウクレレなどはほぼフラット(平ら)なものも存在します。


7.25インチ(約184ミリ)R

ギター指板では最も丸い部類でフェンダーのヴィンテージやトラディショナル系モデルなどで採用されている事が多い。ロックフォームなど握り込みやすくセーハなどのコードプレイもしやすい反面、弦をベンドした時のフレットとのアロアンスが狭くなるため、低い弦高設定ではチョーキング時に音詰まりやビビリなどが発生しやすいデメリットがある。


9.5インチ(約241ミリ)R

9.5(あるいは10インチ)Rはフェンダーではカスタムショップ製など近年モダン系モデルやリファインモデルなどに広く採用され、トラッドな握り込みやすさを維持しつつベンドプレイでも音詰まりしにくいよう配慮しバランスをとった曲面。現代的なプレイスタイルや昔より一般的に細くなった弦の使用に最適化された新スタンダード設計と言える。


12インチ(約305ミリ)R

12インチRはギブソン系も多く採用し、カーブがよりなだらかでフラットに近づくため理論的にはさらに低い弦高設定が可能な曲面。テクニカルフレーズや速弾きプレイなども想定した設計と言えるが、トレードオフとして、この辺りから握り込むロックフォームなどでネック指板が幅広く感じたりエッジ(側面)が立っているように感じはじめる。


16インチ(約406ミリ)R

エレキギターでは平らな部類の16インチR指板はクラシックフォームでのストレッチやテクニカルなプレイに重点を置いた設計と言える曲面で、ベンドを想定した低い弦高設定の物理的限界も広がる。7弦などの多弦ギターはこの位から。ネックの厚みや掌の大きさにもよるがネックを握り込んだり親指を使ったプレイなどには比較的不向きで弾きにくく感じる。


コンパウンドラジアス指板

上記の円柱指板とは別に、ヘッド(ローフレット)側からボディ(ハイフレット)側に向かって曲面が徐々に緩やかになっていく円錐形状の指板をコンパウンドラジアス指板と言います。例えば「ヘッド側端9.5インチR〜ボディ側端12インチR」など、一流職人がコンパウンドで少しずつなだらかに削って指板面を整形するため高額なハイエンドギター向けで、ベンド時の音詰まりなども起きにくくなり、性能と弾きやすさを最大限両立する良いとこどりの豪華仕様と言えます。


円錐指板と円柱指板のイメージ

フレット打ち換えのタイミングであれば、板面削り加工でキツイ指板Rを緩やかにしたり円錐指板にしたりすることも一定の範囲で可能ですので、ビビリやカスレにお悩みの方は随時セットアッパーやリペアクラフトマンに相談しましょう。


弾きやすさは個々人お好みのネック形状

慣れたギタリストならギターのスペックディテールを見ただけでその弾き心地にある程度の想像がつきますが、様々なタイプのギターを弾いた経験が少ない方はやはり実際の試奏で色々弾き比べてみて最も弾きやすく感じるものを選ぶ方法が一番良さそうです。普段弾く事が多いフレーズやその奏法、あるいはご自身の掌の大きさや指の長さなど身体的特徴によってもベストフィットは変わってくるでしょうし、ネックのシェイプや幅などと同様に指板面のR具合も握り心地など個々のプレイヤビリティに直結する繊細かつ重要な要素ですので、ご自身のプレイスタイル等を踏まえて理想や好みを数値で把握しておくと良いかもしれませんね。


靴を脱いでペダルを踏むドラマー

ドラマーで言うと、ペダルの踏み心地で靴を脱ぐ派とかそういう完全に個々人お好みの話ね笑。


ちなみに冒頭写メのうちの Fender MEX JAGUAR は24インチスケールの9.5R指板、ネックもナット部42ミリ幅かつ細身のCシェイプで手の大きくない僕でもとても握りやすいのですよ。


フェンダージャガー

時々色々少々狭いけど苦笑ほなまた@nac_guitar


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