JazzmasterとJAGUARの違いと魅力&欠点比較
最近若いギタリストたちの間でジャズマスター人気が高まっている様子で、かく言うぼくも今年初めて(Fender/Mexico/Jazzmaster)購入致しました。が、
断じて女子に媚びてるとか若者にモテたくて流行り追ってるとかではありません笑。
既存のジャガーでは出し難い音やニュアンスを狙い意図して使い分けるべくの追加導入で、やはりそれぞれ弾きたくなるフレーズも気持ちよさのテイストも大きく変わります。どちらもフローディングトレモロシステムを搭載したオフセットウエストシェイプ(※FENDERのOFFSET系ギターが良い気分参照)のため一見よく似た両機は実は意外なほど別々のキャラクターを持っているのですが、ミュージシャンならさておき一般的にはその酷似したルックスで混同されがちです。
そこで今回、人によっては弾き難いとか生音が良くないとの評判?両論で好き嫌いの分かれる二台巨頭のフェンダー製JAGUAR(以降JG)とJazzmaster(以降Jzm)の両方を使っている僕なりに、良い点悪い点というか特徴の違いとそれぞれが持つ魅力や欠点を比較し人気の理由を詳しく説明してみたいと思います。
- 左←:Fender MEXICO・Jazzmaster/Troy Van Leeuwen MODEL(※ピックガード換装)アルダー体&ローズウッド指板。最近のジャズマスにしては珍しいブロックインレイ&バインディングの高級ネック仕様と、ドス黒く深い珍しい赤色に惚れたムスタングブリッジタイプ。
- 右→:Fender MEXICO・JAGUAR/Classic Player Special SS Ver(※どノーマル)アルダー体&ローズウッド指板。クラシックと名付いてはいるが、T.O.Mブリッジ採用やトレモロブロックの位置とネック仕込み角度を見直し弦張力低下を改善したモダン系スペシャルモデル。
相違点
まずそれぞれの機種の主な特徴の違いを解説します。一見して判るのは、Jzmが一枚の大判ピックガードを装備しているのに対し、JGはコントロールパネル部に3つのメタルプレートを組み合わせたデザインモチーフになっている点ですが、それ以外にも多くの相違点があります。(※ナット幅や指板ラジアスはモデルにより様々ですので論点から除外。また、標準的なスペックのモデルを想定していますので特別仕様タイプなど一部詳細変更されている場合もあります。)
ネックスケールの違い
最も大きな違いはなにをさておきネックスケールの長さです。Jzmはソリッドギターでは最も大きなシェアで一般的なロングスケール(25.5インチ・約648ミリ)なのに対し、JGは比較的少数派のショート(フェンダーミィディアム)スケール(24インチ・約610ミリ)を採用しており約4センチも長さが違います。この弦長の違いにより同じ音程にチューニングした時の弦の張力に差が生じ、音の鳴り方はもちろん、弾き心地も変わり短い方が弦テンションが緩くなります。写メの比較だと画像の歪みなどで判り難いかもしれませんが演奏時の感覚は驚くほど明確に変わってきます。
ネックの太さ
傾向としては、ロングのJzmが太く厚めで、ショートのJGが細く薄めです。が、ネックシェイプも含めてタイプやモデル毎に仕様が異なるので随時確認が必要でしょう。ちなみに指板Rに関しては、各モデルのコンセプトにより変わりますが、殆どが R7.25 か R9.5 の何れかです。
フレット数の違い
ショートのJGは通常22フレット仕様ですが、ロングのJzmは21フレットまでのトラディショナルスタイルなモデルが中心のラインナップなので、曲のキー等によってはハイポジションでの演奏に制限が生じる場合もあるかもしれません。が、21フレ仕様をチョーキングなどを混じえてテクニックでカバーするドMな楽しさも無くはないです笑。
スイッチ類の操作方法
ぱっと見見慣れぬスイッチ類がたくさんあり、知らないとスイッチ操作難しそうと思う方も多いと思いますが、一度説明を聞き理解すれば極シンプルで慣れるとむしろ使い勝手良く感じるほど簡単なので恐れる必要は全くありません。
ローカット回路の有無
JGの3つのピックアップセレクタースイッチの並びにあるローカットスイッチという低音帯域を少し削る特殊なコンデンサー回路はJGにしか装備されていません。厚いバンドサウンドの中でギター音帯域が他の楽器と被って濁ったり埋もれてしまう場面でも、極端に音色や音量を変えることなくわずかにこもるロー帯域を削りギター独特の音像をよりクリアで鮮明にすることが容易に出来ます。これはP/U位置に関わらず作用します。
プリセット回路は共通仕様
フロントピックアップの上部に搭載されるプリセットサーキットスイッチと2スライドツマミは、フロントP/U専用のボリューム&トーン設定をワンタッチで切り替えるスイッチです。下部のP/Uセレクター類やアウトプットジャック付近のボリューム&トーンとは完全に独立しており、通常のフロントP/U単体セレクトよりもさらに太くマイルドな音が特徴です。オンにすると全てに優先してこのプリセット設定が反映されますので、例えば予め音量を0に絞っておけばキルスイッチ(消音)としても機能します。これは一部の廉価版モデル等を除き両機共に実装されている回路です。
ピックアップ
Jzm搭載のピックアップは一部モデルを除き原則ラージサイズシングルPU一択で、外観はハムバッカーちっくであったりギブソン・レスポールミニ等で有名なP-90系統に似ていますが、構造的にはむしろストラトキャスターPUに近いシングルピックアップです。年代別などで幾つかの種類がありますが、共通して音帯域が広く豊かで太く甘い出音。リア〜フロントの物理的距離も広く、MIXポジションでのさらに幅広い音帯域もいかにもジャズマスターらしいサウンドの大きな要因のひとつです。
一方JGはストラト等に使用される通常のポールピース付シングルコイルよりも磁界を整えつつより美味しいトレブリーさが魅力のヨーク(淵のギザギザ)付きシングルPUと、ハムバッカーPUタイプそれぞれのモデルが存在しますが、太いハイゲインを求めるならハムバッカーバージョン、よりJGらしい特徴的な中帯域が味わえるのはシングルPUバージョンと言えるかもしれません。
似ている様で少し違うシルエットバランス
ぱっと見のルックスは激似で素人目には概ね同じ印象の両機ですが笑、実はボディのサイズは僅かにJzm系の方が大きく膨らみ、逆にヘッド部はJGの方が大きいラージヘッド系です。抱えた時にJGの方が少しだけコンパクトに見えるのは、僅かに小さくシャープなオフセットボディとよりネックが短くヘッドが大きいこのシルエットバランスの差が総合的に影響しているでしょう。左がJGで、右がJzmです。先の円形部分の差が特に大きい事がわかります。
実はボディ裏側コンター(凹み削り)加工具合も少し違い、Jzmの方が横に幅広く削られているので、立って構えた時の体へのフィット感はよりぽっちゃりさん向けと言えるかもしれませんね笑。
Fenderロゴに関して
モチーフモデルの年代等にもよりますが、基本的に、画像左のJGは現代その他のフェンダーギターでも主に使用されている「トランジションロゴ」ですが、右のJzmでは伝統的に「スパゲティロゴ」と呼ばれるクラシカルな細いタイプのロゴマークが使用されます。(※Fender News:"スパゲティロゴ"と"トランジションロゴ")
魅力と欠点の比較
というか特徴の差と言い換えるべきかもしれませんが、それぞれの機種の長所や短所を比較分析しその魅力を考察してみます。
ジャズマスターの魅力
1958年発表。当時ギブソン社レスポールが独占していたジャズ市場を狙い開発されたJzmは、フローティングトレモロシステムによる独特の倍音感と滑らかなアーミング、大きなボディと多彩な回路搭載によるボディザグリ(空洞)面積の大きさと深さからくる(かもしれない)チェンバード加工ちっくなセミアコ的ニュアンスもある豊かな中帯域とエアー感のある生鳴りを含む響きが特徴的で、生音でも判る独特の粒立ちと幅広い帯域発音が最大の魅力。ストラトと比較しより太くて甘いメロウなニュアンスのラージシングルピックアップの音色も貴重な存在。リアPUで歪ませたジャキジャキのクリアでパワフルなサウンドが代名詞のような印象が強いですが、立ち上がりの良いミッドとボディの鳴りを活かした美しいクリーントーンや、フロントやハーフトーンでの芯のあるクランチなど薄化粧でこそこの機の真価が発揮されると思う。※ジャズマスター使用ギタリスト主要モデル5選の特徴もご参考に。
ジャガーの魅力
1962年フェンダー社最高級機種として発売された後発JGもフローティングトレモロパーツはJzmと共通パーツですが、ショートスケールによる低弦張力と専用ピックアップのアレンジで鳴り方はよりソリッドで鋭い印象。ストラトと比較してもよりワイドレンジかつ中帯域も特徴的。弦テンションの低下は、強いピッキングアタックで僅かに音程が暴れる癖があったり、比較的サステイン(発音の減衰)が短かったりするデメリット面もあるが、弦ゲージアップである程度補えるし、そんなちょっとだけルーズでエッジーなニュアンスもワイルドロックな風味で得難い素敵なキャラクターを醸成。他モデルにはない唯一無二のローカットスイッチも絶妙な匙加減が秀逸で実用的。しっかりザクザク歪ませて荒々しく弾くか、クリーンなら手数多くちゃきちゃき軽快にカッティングを弾きたくなる。※フェンダージャガー使用ギタリストの愛器達 でも詳しく説明しています。メタルパーツを多用したメカニカルな風貌も魅力の一部。
共通の欠点?や特性など
よく議論され問題視されるのが独自構造のフローティングトレモロとブリッジ間の「シャーン・ヒャーン」とかいう共振や共鳴ですが、これに関してはブリッジとテールの間にバズストップバーというパーツをボディ無加工(既存ネジ間に挟むだけ)で付けられるのでデメリットなしである程度制振可能。ただ個人的には無くてもさして気にならない、というか弦テンションが僅かに上がり弾き心地も若干変わるしアーミングの滑らかさも少々スポイルされるため、むしろ無い方が独特の鳴りや味が活きて嫌いじゃないので好みの問題。
対してブリッジの土台はアーミングの初動をさらに滑らかにするべくアーム操作と連動して若干前後に動く仕様が基本で、これが「チューニングが不安定」と仰る方もたまに見受けるが、実感としてはほぼ関係ない。ロック式等と比べるとそれはそうなのかもしれないが、ゲージ「10-46」以上の弦を張れば気になるレベルでは全くないので、もし著しく不安定と感じるならブリッジの調整具合やサドルやナットの滑りなど何か別の原因があるかと。
また、ヴィンテージ系モデルに搭載されている昔のネジネジサドルのブリッジが、昔発売当時の太い弦を前提とした構造のため現代の細くなりテンションが下がった弦では強いピッキングやチョーキング等でサドル溝からパチンとズレ落ちるという現象いわゆる「弦落ち」がしばしば問題に。気になる方は「マスタリーブリッジ」「ムスタングブリッジ」「チューンオーマチック(アジャストマチックブリッジ)」など様々な互換リプレイスメントパーツもありますし、最近はそもそも最初からこれらのブリッジを載せ現代的なモダンアレンジが施されたモデルも販売されているので選択肢はあるはず。ちなみにぼくが今使っているブリッジは全て T.O.M か MUSTANG bridge のいずれかです。
詳しくは過去の「JAGUAR&JAZZMASTER パーツ補完計画」や、「チューンオーマチックブリッジ調整交換(JAGUAR編)」等ご参考にどうぞ。
トレモロアーム
本体の特性とは少し話が逸れますが、たぶんストラト系のトレモロアームに馴染んでる方は「アーム長っ!」と思うかもしれません。ぼくもそうです笑。演奏中ぶらんぶらんする長い鉄棒が気になる方もおられるかと。よりボディ後端にあるトレモロユニット故の仕様ですが、この長さが軽い力で滑らかなアーミングを可能にする操作性に一役買っているのも事実。
右端がフェンダーメキシコジャズマスター純正ですが、インチサイズのJzmタイプは差し込むだけの特殊構造なのでFENDER純正以外選択肢ないかも。左3本がJG用のくるくる回すインチネジタイプ。一番上がフェンダーメキシコジャガー純正で、下2本が社外品のちょっと短いアームです。が、なんてメーカーだったかあまり覚えていません苦笑ごめん。アマゾンとか楽天とか通販で買った中国製だと思う。
もちろんどれもちゃんとはまってしっかり操作可能。気になる方は長さも角度も様々なサードパーティ製アームが多数存在しますので探して試してみるのも良いかもしれません。インチサイズのアームにも数種あり、USAジャガータイプの基本は「3/16インチ」で「4.763ミリ」なので直径約Φ4.8mmタイプなら合うと思います。ちなみにフェンダージャパン製の場合は基本パーツ採寸がミリ規格(通常5ミリ)に変りますのでご購入の際はご注意を。(※後日談トレモロアーム換装の勧めもぜひ。)
NAC♯ Loves Fender JAGUAR & Jazzmaster Guitar!
いかがでしたでしょうか。そもそも「持ってるんだからそりゃあ好きなんだろうよ」って話ですが笑、それぞれ一長一短ありますがどちらもホントに個性満点で素敵なギターだと思うわけです。ちなみに今回フェンダー製に限っての話ですので、その他メーカーの疑似タイプでは仕様等も大きく変わってくるため論外ですのでお含みおきを。こちらの再生リストで両機それぞれの音色動画でお聞きいただけますのでご参考になれば。
YouTube NAC♯Guitar Sound Introduction
近年はジャズマスに比べてジャガーの方が少々不人気気味の様子?ですが、どちらにも得難い独特の魅力があり正直ぼくは甲乙つけ難いです。まあJzmの方が普通に万人受けしてJGの方が比較的扱い難く玄人向けなマニア要素はあるかもですが。スケールやネックの違いはさておき、サウンド特性のみで分かりやすく強いて言えばJzmはブルースやポピュラー向きでJGはソウルやロック向きと言えるかも。キャラクターの違いは大いに認めるところなので、弾くフレーズや曲調やバンドの雰囲気などよりテイストにマッチする方をチョイスして使い分けたいのが本音。見た目の類似性とは裏腹に全く別物の両機ですので、なんか可愛い形が好きで見た目から入るって方はじっくり弾き比べてみるべきでしょう。究極の二択として、もし生涯弾くギターを1本だけ選べと言われたら…
ジャガーとジャズマスの要素全部入りダブルネック特注するかもしれないですね♪
オフセットシェイプが更に縦にもストレッチされアメーバ的シルエットに進化したNAC#ギターJ&Jみたいな。
大草原不可避のバカウケ爆誕間違いなしWWW
…その後…。何気にインスタ見てたら、まさかの激似ダブルネックがフェンダーカスタムショップから発表されました!爆笑。載せようか迷ったけどスマホのスクショを小さめになので許してね汗。
12弦+6弦のダブルジャガータイプだけどシルエット似すぎだろ驚。色もちょっとキングスライム感出ちゃってるし笑。コンセプトモデルなので通常販売はされていないけど、問い合わせ殺到の大反響なら発売検討されるだろうから推してみては。